山を歩いていると、岩や木の根元に緑のふわふわしたものが生えているのに気づきます。それが苔です。日本には約1,800種の苔が生息していると言われていますが、奥多摩の山道を歩くだけで、そのうちの数十種に出会えます。ルーペを一本持っていくだけで、足元の景色がまったく変わります。

ホソバオキナゴケ:苔の中の王様

奥多摩で最もよく見られる苔のひとつです。乾燥すると白っぽくなり、湿ると深い緑色になります。岩の上や樹皮の上に、まるでビロードのような質感で広がります。成長が非常に遅く、直径10cmの群落が形成されるまでに数十年かかると言われています。触ると弾力があり、乾燥しても死なずに水を与えると元に戻る強さがあります。

コツボゴケ:沢沿いの定番

水辺や沢沿いの岩に多く見られます。葉が透明感のある明るい緑色で、光を当てると宝石のように輝きます。雨の日に沢沿いを歩くと、岩壁一面にコツボゴケが広がっている場所があります。ルーペで見ると、葉の先端が細く尖っているのが特徴です。奥多摩の渓谷ルートでは、ほぼ必ず出会える種です。

ウマスギゴケ:大型で存在感がある

高さ5〜10cmになる大型の苔で、林床に群落を作ります。葉が放射状に広がり、小さな木のように見えます。ルーペなしでも葉の形がよくわかるため、苔観察の入門として最適です。奥多摩では、ブナ林の林床に多く見られます。特に秋、落ち葉の間からウマスギゴケが顔を出している様子は、何度見ても飽きません。

苔を観察するときの注意点

苔は触っても大丈夫ですが、採取は禁止されています。国有林内での植物の採取は法律で規制されています。観察はルーペと写真で。苔の上を歩くのも、できるだけ避けてください。特に乾燥した苔は踏むと壊れやすく、回復に時間がかかります。道の脇から観察する習慣をつけると、苔の群落を長く楽しめます。

苔の名前を一つ覚えると、山道の見え方が変わります。ツアーでは、ルーペを貸し出しながら実際に苔を観察する時間を設けています。山歩きのヒントをまとめたブログも参考にしてください。